定年後でも1億稼げる?LRQAのウェビナー"セカンドキャリアを考える - 審査員・検証人という選択肢"に参加しました
第2キャリアとしてマネジメントシステムの審査員、企業開示情報の第三者保証・検証員を考えている人に向けた、LRQAのウェビナーに参加しました。今回で5回目の開催らしく、品質マネジメントシステムISO 9001審査や環境・社会データの第三者保証・検証を担当されている2名の方が業務に関する概説をしてくださりました。
なんとなく興味はあるのだけど、参加するか迷っている方にむけて、参加してよかった点、どのような内容が語られたか、など簡単にまとめたいと思います。次回参加日は未確認ですが、しばらくは2か月に1回ほどのペースで似たようなウェビナーを開催予定だそうです。タイトルにあるようにウェビナーの中で定年後でも1億稼げる、という夢のようなフレーズがプレゼンターから飛び出ましたが、残念ながら1億までの具体的な道筋は本ウェビナーでは語られませんでした。
ちなみに私はISO 9001(品質マネジメントシステム)とISO14001(環境マネジメントシステム)についてIRCAのAssociate Auditor(准審査員/准監査員)の資格は持っていますが、実務経験のないペーパー准審査員/准監査員です。普段は不動産オーナーが保有するビルの脱炭素化に向けた取り組みへのサポート業務を行っているのですが、その延長線上の業務ということでCO2排出量算定などの保証・検証人というキャリアに興味があり、今回のウェビナーに参加しました。
良かった点
マイクオフ、顔出し不要なので、割と気楽に参加できます。GoToWebinarというウェブアプリを用いて開催されました。GoToWebinarは事前のプログラムインストールなど不要で、開催者から共有されたリンクをクリック、あとはPC画面に表示された指示にしたがって数回クリックをすれば、接続可能となります。オンラインで自宅から受けられるのは良いですね。参加費用も掛かりません。
LRQAのウェブサイトの検索ページ(https://www.lrqa.com/ja-jp/search/)に”セカンドキャリア”と打ち込むと過去の関連ウェビナー開催情報ページが引っ掛かります。各ページにアクセスすると、氏名や連絡先アカウントの記入は必要ですが、ウェビナーで使用された資料のダウンロードも可能となっています。参加した方はダウンロード資料をみながら記憶を呼びさましておさらいをするのに良いですし、まだ参加していない方は、まずはダウンロード資料を見てみるとイメージがつかみやすいかもしれません。実際のウェビナーに参加することのメリットとしてはプログラムの最後の質疑応答があると感じました。質問内容をチャットに打ち込めば、プログラムの最後で他の方からの質問と合わせてまとめて回答してもらえるので、疑問点がクリアになります。
各プログラムと概要
途中からメモを取り出したので抜けがあるかもしれませんが、プログラムは下記のような内容でした。
01会社紹介
02研修コース
03審査員の仕事(審査員の業務紹介、なって良かったこと、たいへんなこと)
04検証人の仕事(審査員の業務紹介、なって良かったこと、たいへんなこと)
05質疑応答
01会社紹介
ウェビナー開催企業であるLRQAリミテッドの紹介が5分ほどありました。
もともとはロイド レジスター クオリティ アシュアランス リミテッド ジャパン(略称:LRQA)ということでイギリスの慈善団体であるロイド・レジスター・ファウンデーション (Lloyd’s Register Foundation) の保有でしたが、2021年7月にゴールドマンサックスアセットマネジメントへの売却発表のプレスリリースが行われています。今までの実績とブランドを維持するために略称だったLRQAを新会社名として採用したようです。
02研修コース
すみません、メモがなく内容も覚えていません。おそらく審査員/監査員になるための研修プログラムの紹介だったんだと思います。
03審査員の仕事(審査員の業務紹介、なって良かったこと、たいへんなこと)
インフラなどの設備管理の業務を担当、その過程で設備の品質として予防保全推進を担当し、その後審査員へというキャリアの方からの審査員についての解説でした。個人的に参考になった点を書いていきます。
【参考になった点1 トレーニングから審査員になるまでの具体的なプロセス例】
入社
個人事業主として契約
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研修
旅費や宿泊費などの経費は申請可能のようですが、研修期間中は基本無給らしいです。期間は3か月から半年ほど、力量次第でかわるとのことでした。
研修 → オブザーバー(実際の審査にメンバーとして参加) → AuT(Assessors under Training、マンツーマンによるOJT教育)
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審査員
メンバーとして主体的に活躍するのはここから、給料も発生します!
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A/L (主任審査員として研修)&主任審査員
主任審査員研修を受けたあと、主任審査員に。給料アップです!!A/Lは何の略かわかりませんでした。
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他の規格の主任審査員
QMS審査(品質マネジメントシステム審査)が基本ですが、多くの方は他の規格の主任審査員になり、更なる給料アップを図るそうです。長く働けるのが良い点で50代60代はまだ若造、LRQA所属の最長審査員は81歳ということでした。タイトルにある定年後に1億以上かせぐことも、というのはこの長く働けるという部分も関係しているのかもしれません。化学、印刷関係の経験をもっているかたは審査員が不足しているのか重宝されるそうです。IATF(自動車)、IRIS(鉄道)、ISO13485 (医療)、FS(食品安全)など特殊な審査でキャリアが必要な審査もあるとのことでした。これらのバックグラウンドがあるかたは報酬も良いのかもしれませんね。なお多少のITと英語の知識は必要とのことですが、スピーキング能力は求められておらず、英語の読み書きも翻訳ソフトで大体何とかなるそうです。
【参考になった点2 一週間の仕事の流れ】
審査プロセスがはじまると、基本的に平日は審査を行い週末報告書のアップ&審査敷地への移動、という一週間になるようです。なかなかハードですね。独立審査員(おそらく契約社員)の場合は審査以外の日は基本的に自由時間ですが、正社員の場合は審査がない日でも研修の講師や調査業務などあり割と忙しそうです。プレゼンターの方も出張が続くので体調管理が大事と繰り返し述べていました。また、自分の知らない業界の審査を行うこともあるので、好奇心をもって勉強をするのはマストとのことでした。
04検証人の仕事(審査員の業務紹介、なって良かったこと、たいへんなこと)
品質マネジメントシステムの審査に加え、非財務情報の検証を担当されているプレゼンターの方からのレクチャーでした。審査員の多くが50代、60代あたりから検証員としてのキャリアをスタートさせることが多いそうですが、プレゼンターの方は20代から検証の仕事を始めた珍しいキャリアの持ち主のようです。温室効果ガスを検出する分析する装置の開発研究から外資系第三者機関へ就職、その後検証キャリアをスタートさせたとのことでした。
【参考になった点1 第三者保証・検証が必要な理由】
私自身、業務の中で、不動産オーナーや不動産運用会社から、保有または運用しているビルで消費するエネルギーや水、廃棄物といったデータの保証・検証ができないか、といった相談を受ける機会が今までも数回ありました。今回のウェビナーに参加することで、実際に保証・検証業務を実施している方から、どの企業も情報開示が必須になっており、開示された情報のデータの正確性や偏りのなさもチェックの対象になっている、という話を伺うことができ、なぜ保証・検証の相談が増えているかのバックグラウンドが理解できました。
特に2021年6月コーポレートガバナンスコードの改定は影響が大きいと感じているそうです。プライム市場上場会社は、サステイナビリティ、気候変動に関する情報についての開示の質と量の充実を進めるべきとされました。この”開示の質と量の充実”という部分がマーケットでは事実上の義務化としてとらえられ、多くの企業が気候変動を含むサステイナビリティに関する情報の開示を行うようになっているそうです。気候変動に関する情報としてはガバナンス、戦略、リスクと管理、指標目標などが上げられます。
【参考になった点2 保証・検証業務の仕事について】
第三者保証・検証業務とは、企業が統合報告書、サステイナビリティレポート、Webサイトなどで開示する各種情報の記載の信頼性・正確性を評価する仕事になるそうです。開示情報の具体例として、企業のエネルギー使用やGHG排出量などの環境データ、休業災害度数率や社会貢献活動に関する社会データなどが上げられていました。またデータだけでなく、統合報告書やサステイナビリティレポートの内容全体の評価も増えているそうです。
保証・検証業務はクライアントの契約締結後、イニシャルレビュー(ステージ1)とデータ検証(ステージ2)の実施というステップを経て保証声明書発行までを2,3か月程度で実施するのが基本となるようです。ステージ1では社内体制やデータ算定のプロセスといった仕組みのレビューを行い、問題なければステージ2で実際のデータ検証(集計数値の精査、サンプリングによるサイト往査、エビデンスとの突合わせ等)を実施します。
CDP等への報告時期との兼ね合いで3~7月が保証・検証員の繁忙期となり、それ以外の時期は審査員や検証員の研修といった業務を実施することが多いらしいです。
05質疑応答
2022年3月16日の回でメモしていたいくつかのQAを紹介します。
Q 研修で適正判断された審査員でも途中退職する人はいるのか?
→ A 0ではないがごく少数。100人入って、1,2人くらいでは。
Q 仕事上の英語能力は?
→ A 喋ることはない。中学校レベル、英検3級ほどの能力があれば十分では。
Q クライアントとの相性が悪くて心がおれることがあるか?
→ A たまにある。相性は仕方がない。
Q 契約社員になるための年齢制限は?
→ A 特になし。定年もない。
Q 保証・検証人になるための研修はだれでも受けることが可能なのか?
→ A 検証人の業務委託契約または正社員になったあとに受けることが可能。検証費は出す。
まとめ
今回はすべて書ききれませんでしたが、一日の仕事の流れや、仕事をしていてよかったこと、つらかったことなど、実務に携わられている方の話を直接うかがえる良いチャンスです。またQAの時間も取られているので事前に過去開催資料を眺めてから質問を用意していくのもありですね。私と同じく審査員・検証人のキャリアというものに関心がある方の参考になれば幸いです。