バイオマス発電は環境にやさしいのか?(セミナーレポート)

国際環境NGO FoEによるオンラインセミナー

「バイオマス発電の持続可能性を問う」第6回:EUの動向から考えるバイオマス発電の先行きのセミナ―を受けての感想や発見をシェアします。

バイオマス発電の持続可能性を問う―FIT制度への提言 第6回:EUの動向から考えるバイオマス発電の先行き

現在、欧州連合(EU)は再生可能エネルギー指令(EU-RED)の改訂作業に入っています。バイオマス発電については、もともと森林などのからの土地利用転換を伴って生産された燃料を除外するなどの持続可能性基準がもうけられていましたが、生物多様性への影響を最小限とすること、カスケード利用など基準が厳しくなる方向です。しかし、まだまだ大きな議論があります。

また、イギリスでは新規バイオマス発電の温室効果ガス排出量の上限を厳格化、オランダではバイオマス事業への新規補助金を一時停止するなど、バイオマス発電をとりまく状況は急激に変わっています。

この動きの背景には何があるのでしょうか?バイオマス発電の未来はどう変わるのでしょうか?EUのバイオマス政策の専門家をお呼びして、バイオマス発電の今後や日本への示唆について学びます。

https://www.foejapan.org/forest/biofuel/2020.html

再エネとされるバイオマス 浮かび上がる問題点

世界中や日本国内でも脱炭素、再生可能エネルギーへの変換の動きが加速しています。再生可能エネルギーとは自然由来の枯渇しない資源によるエネルギー生産を指します。再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)ではバイオマスも再エネとして認められており、年々発電量が増えています。

再生可能エネルギーとされるものを使用すれば環境にやさしいのでしょうか。一次森林の保護や生物多様性の観点から見た場合、懸念すべきことが沢山あるということを気付かせてくれたセミナーでした。EUではすでに基準の書き換えの議論がなされているということで、オランダとイギリスの専門家からそれぞれ状況の共有もありました。

以下セミナーで知った内容です。特に、大型の木材燃焼バイオマスについては、単純に環境にやさしい発電方法とは言えない事情が沢山ありました。

国内

  • 現在、稼働・計画されているバイオマス発電所は、輸⼊バイオマスを前提にした⼤規模バイオマス発電所と、主として地域材を燃料とする中⼩規模のバイオマス発電所に⼆分化している。
  • 主に大規模バイオマス発電に問題が多い。
  • 大量バイオマス発電のためには大量の木材が必要となる。
  • 大量の木材を日本では調達しきれないため、基本は輸入木材に頼る。木材の国内自給率は10%を切る現状がある。
  • 輸入木材を燃料とする前提のため、大型木材バイオマスは海沿いに作られている。
  • 日本で稼働容量の6割強、認定容量の9割弱が主に輸入バイオマスを燃料とする一般木材バイオマスの区分となっている(©NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク)
  • 森林バイオマスによるCO2排出量は、消費国では計上されず、森林の⽣産国(の森林ロスとして)にて計上される。
  • 木材や燃料の運輸によるCO2排出量はバイオマス発電においては、どの国もカウントしていない現状がある。
  • 何もしない場合と比べ、バイオマスのための木材伐採や農地の開拓による生態系の影響を鑑みると、少なからずCO2の吸収量は従来より減少してしまう。
  • エネルギー利用の目的だけに伐採された木材が特に問題。
  • 国内では、日本の森林の4割が人工林。間伐材の利用も促進されておりカスケード利用の事例もあるが発電効率が悪いものが多い。

EU (オランダ、イギリスをはじめとする動き)

問題は何を燃やすかだ

  • EUは、いくつかのタイプのバイオマスを認めない(ベニヤ、マルタ、切り株、根)方針。補助金も一時的に無しとしている。”一次林の保全”に梶を切ろうとしている。
  • 現状、森林由来のバイオマスの割合は、EUのバイオマス発電の割合のうち6割を占めてしまっている。
  • EUでのバイオマスの発電量は、ポーランドやスペインの国全体と同じ程度使われている。
  • EU-REDと呼ばれる「EU再生可能エネルギー指令」の書き直しを実施中。
  • バイオマスの利用のシュミレーションをしても、生物多様性を損なわず環境に悪いインパクトを残さないシナリオは1つしかない。
  • イギリスでは新聞などでも議論されている。見出し”イギリスのバイオマス発電は石炭よりCO2を排出している”
  • 国内では木材が建材に利用されたりするが、バイオがこれだけ多いのは燃料に使う方にインセンティブがあるのか。詳細は不明。

セミナーの概要

バイオマス発電の持続可能性を問う―FIT制度への提言
第6回:EUの動向から考えるバイオマス発電の先行き
https://www.foejapan.org/forest/biofuel/2020.html

【関連情報】
>第5回までの資料・映像はこちら
https://www.foejapan.org/forest/biofuel/2020.html#shiryo

>レポート「バイオマス発電は環境にやさしいか? “カーボン・ニュートラルのまやかし”」
https://www.foejapan.org/forest/biofuel/210514.html

感想

今まで「バイオマス」と聞くと、森林が炭素を固定(CO2を吸収)しているし、化石燃料よりも早いサイクルで森林が復活するため再エネだ、と短絡的に信じていましたが、セミナーを聞いて実情を知り、色々気づかされました。

「バイオマス」発電といっても、燃料が何かにもっと興味を持つ必要があると感じました。輸入木材の燃焼によりエネルギーを得ているのか、国産材なのか、カスケード材と呼ばれる端材を利用しているのかなど、もっと情報が開示されていると良いと思います。

個人的には、未利用エネルギーの利用、という観点から可能性があるように感じているので、この点では、しばらくは賛成の立場でいようと思っています。他にも勉強すべき材料などあれば教えていただけると嬉しいです。

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