どうにかならないの?何がいけないの?プラスチックを取り巻く背景
脱プラ製品の紹介をブログに書いたりしていますが、そもそもなぜプラスチックがここまで問題になっているのか、世界の動きや日本の動きをまとめました。自身の忘備録も兼ねて。
プラスチックを取り巻く状況
プラスチックに関する問題と一言で言っても、多方面に影響があり、それぞれの側面で起こっている問題を紐解く必要があると思いました。以下3つ「資源の過剰利用」「CO2の排出量」「海への流出」に分けています。他にも輸出されたプラの廃棄先の労働環境など問題視されている点もありますが、全て拾いきれなかったので一旦3つとしています。
出展は主に環境省プラスチックを取り巻く国内外の状況の資料とエレンマッカーサー財団、OECDの資料を参考にしています。
資源利用への抜本方針が必要
産業革命後、すごいスピード人口が増え、すごいスピードで資源を消費してきました。このペースがはやすぎると警鐘が鳴らされています。計算では、地球1.7個分の資源を使用しています。7月29日を「アース・オーバーシュートデー」と呼び、地球1個分の資源を使い切ってしまった日です。
<急激な人口増加> 産業革命以降、エネルギー・資源の消費が爆発的に増加。
•産業革命初期(18世紀初期)の世界人口は7億人でしたが2020年は10倍の72億人、地球にとって200年のうちに急激に人口が増え資源の消費量が増えています。
•今後人口はさらに増加し、2050年には世界人口98億人。2100年には110億人に達する見込みといわれています。(一方、日本は人口減少の傾向ですが、資源の自給率が低いため資源問題は世界的にとらえる必要があります)
•現在世界では、地球1.7個分の資源を使用している (WWFhttps://www.wwf.or.jp/activities/data/20190726sustinable01.pdf)
•このままだと、既に使用しすぎといわれている地球の資源使用量は、2060年には現在の2倍になります。
地球温暖化対策の側面
プラスチックの製造には原油を分解したナフサから作られます。石油(OとHとCが含まれる)由来製品のため加工の際、および廃棄の際にCO2が排出されます。
<CO2の排出> プラスチックの生産、廃棄で生じるCO2による地球温暖化の加速要因に。
•パリ協定で地球温暖化による気温上昇を2度以下(1.5度以下)が目標とされています。
•プラスチック年間生産量は過去50年で20倍増、うち9%のみがリサイクルされています。1970年代から20倍です。年上の人があまり気にしていないのは、教育を受けたときは問題になるほど流通しておらず、学校を出てから年々増えている中に生きているからでしょうか。
•現在、世界の石油生産の6%がプラスチックに使用されており(2014時点) 、2050年には原油の20%(温室効果ガスの15%)を占める予想。
•現在の東京のプラスチックに関するCO2の排出は1億トン。
•日本プラスチックの生産量は世界第3位。一人当たりのプラごみ発生量はアメリカに次ぎ世界2位です。確かに日常生活でもかなり多くのプラスチックを使っていますよね。日本中に浸透しており、本当にプラスチックフリーの生活を送るのは難易度が高いです。
海洋プラスチックへの対策
プラスチックは正しく廃棄されず海に流出します。ストローが刺さったウミガメが世界を震撼させたのは記憶に新しいですね。先日シュノーケルを楽しみましたが、海の中にもいくつかプラスチックを見つけました。一度柳州津するとなかなか回収が難しいとも言われています。また海流の関係で、マグロの生息域にプラごみがたまりやすいようで、魚介を多く食べる我々にとっては健康問題にもつながる懸念があります。
<海への流入> 生態系の破壊、人間の健康被害の可能性も高い。受け入れ先のないプラごみ。
•正式な廃棄のされないプラ、細かく分別不可のプラ(マイクロプラスチック)が海に流入。
•海には累計1.5億t さらに毎年800万tが流入。2050年には魚と同じ量に(重量) 。プラスチックは軽いです。魚の総量と重量で同じ、ということはかなり多くのカサのプラスチックが海に漂うことになるという点に気づくとすごいですね。
•流入したプラスチックは、分解されマイクロプラスチックとなり、回収が困難。
•直接、海洋生物の生態系に影響を及ぼすだけでなく、プラスチックに化学物質が付着し生物濃縮される
•人間はすでに1週間にカード1枚分のプラスチックを食べている 個人的にいちばん驚きの数値です。
•中国は2017年にプラゴミ輸入中止、日本のプラごみの2017年輸出量は143万トン、2018年は53万トン。国内に廃棄まちのプラがたまっている、また不正に輸出されているプラがあると報道で見たことがあります。もちろん正式にリサイクルされるわけではなく、東南アジアの国に廃棄されるのみです。
行政の対応
世界の潮流
世界的にはサーキュラーエコノミーパッケージをはじめとするEUのルール作りがベースになっています。アメリカでも州ごとに使い捨てプラスチックを規制する動きが活発です。特に西海岸を中心にプラスチックを嫌う動きが大きく、西海岸系のIT企業では社内でマイボトルを使うなどの文化が早くから根付いているといわれています。
【EU】2015年12月
サーキュラーエコノミーパッケージの公表
従来の3R政策を物質、資源の循環による資源使用の極小化といった環境負荷の抑制を目的とする環境政策に対して、CEでは、「物質・資源の循環」を通じて新たな経済性をもたらすいわゆるビジネスモデルの創出を促す産業政策として打ち出されたことが特徴
【EU】2018年1月「循環型社会における欧州プラスチック戦略」発表
同年10月に「使い捨てプラスチック指令案」がEU本議会で採択。
【G7】2018年6月、主要7か国・地域(G7)首脳会議「海洋プラスチック憲章」採択。
2030年までにプラスチック包装の55%以上をリユース・リサイクルし、2040年までに、すべてのプラスチックを有効利用する数値目標を盛り込んだ。
【EU】2019年7月に「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令」が発効
使い捨てのプラスチックや発泡スチロールで作られた食器や食品容器の市場流通を禁止
(食品関係ではプラスチック製のストロー、マドラー、カトラリー、皿のほか、発泡スチロール製の食品容器、飲料容器(キャップ・ふたを含む)、飲料用カップ(カバー・蓋を含む)。また、使い捨てか否かにかかわらずオキソ分解性プラスチック製の全製品が禁止の対象)
(その他)NY州、カリフォルニア州 ホテルの使い捨てアメニティを廃止
カリフォルニア州が2019年に初制定。NY州は追って制定、50部屋以上有するホテルは2024年1月から、それ未満のホテルは2025年1月から適応
国内の潮流
国内の動きはどうでしょう。諸外国に続き、国内でも環境省・経産省を中心にプラスチック問題に関する法律が制定され、施行されています。皆さんにとって身近なのはレジ袋の有料化ではないでしょうか。また、2021年にもあらたにサーキュラーエコノミーを見据えた法案が可決され、22年4月彼施工されます。設計段階から廃棄が無くなるよう設計する考え方にもどついたものです。合わせてメーカーによる自主回収がよりしやすい環境を整え高度なリサイクルを促進するものとなっています。
【環境省】2019年3月「プラスチック資源循環戦略(案)」
使い捨てプラスチックの削減目標などを盛り込んだ案を取りまとめた。
・2030年までに容器包装など使い捨てのプラスチックを25%削減する、
・2035年までに使用済みプラスチックを熱回収を含め100%有効利用する
・2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入する
・レジ袋の有料化義務化を明記
【環境省】【経済産業省】2020年7月から、レジ袋の有料化を義務化
「容器包装リサイクル法」を2019年12月末に改正する。対象となる袋は「消費者が商品の購入に際し、商品を持ち運ぶために用いる、化石資源由来のワンウェーのプラスチック製買い物袋」。バイオマスプラスチックの配合率が施行当初は25%以上や厚さ50マイクロメートル以上、海洋生分解性の袋は対象外とする方針。
【経産省】22年4月から施行「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」
資源循環の高度化に向けた環境整備・循環経済(サーキュラー・エコノミー)への移行
プラスチックの資源循環の促進等を総合的かつ計画的に推進するため、以下の事項等に関す
る基本方針を策定する。
・ プラスチック廃棄物の排出の抑制、再資源化に資する環境配慮設計
・ ワンウェイプラスチックの使用の合理化
・ プラスチック廃棄物の分別収集、自主回収、再資源化 等
【東京都】東京都ゼロエミッション戦略
2050年にはCO2実質ゼロのプラスチック利用を目指す。
2030年目標:家庭と大規模オフィスビルから排出される 廃プラスチックの焼却量を 40%削減(現行の東京都資源循環 ・廃棄物処理計画における 2030 年度リサイクル率目標)
2050年目標:大幅なリデュースと使い捨て プラスチックの廃絶、水平リサイクル等の革新的技 術の実装・普及、海洋へのプラスチック流出ゼロに
まとめ
プラスチックをめぐる環境は日々かわっており、企業の取組みも続々と紹介されています。EUを中心に制度の制定が対策が進められる中、日本も制度がせいていされつつあります。しかし、製作が発表されるたびに強い反発もありmまだまだ日本ではプラスチックを減らす動きは弱いように感じます。現に日本は、国民に浸透した分別意識や高い設備導入によりリサイクル先進国です。しかし、サーキュラーエコノミーの考え方では、そもそも「廃棄を無くす」という考えがあり、リサイクルはあくまでも最終手段です。日本のプラスチック製品の使用量の4割近くが「容器・包装」です。我々消費者の身近にあるものですね。過剰包装に違和感を感じたり、身近にある不要な使い捨てのプラスチックが無いか、使用しない方法があるかを探っていく必要があると感じました。
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